「手記」→「皮肉」
↑ここの8:30辺り〜、「手記」の解説(サムネも違うので、気が付いていない方が多いのかも)
上記の動画については完全ネタバレで書いてしまいますので、ここから下を読まれる方は必ず動画を見てからにして下さい。
まず、手記Pの短編もののマイリストの「皮肉」の動画紹介には、このように書いてあります。
あちらとは違う方向性で同一のボールを受け取れる範囲で投げてみたつもりです。
きっと、これで良い案配になったかと思います。
それと、動画解説編の10:23にはこのような解説があります。
真美「元々手記は一週間公開したら消す予定だったんだよね。
……その代わりに、別の一本の動画が上げられる。」
つまり、「手記」と「皮肉」は前編・後編の関係で、一つのテーマについて語られているということです。
手記Pが6月25日に投稿された「手記」は、主人公の期待通りに再生数、コメント数が伸びず、主人公の本来入れたくなかった要素を取り入れても効果がなく、失望し動画を削除して去ってしまうという話です。で、この話はいわゆるBAD ENDなんです。ここから、手記Pが「時代に迎合すれば必ず再生数が伸びる」とか「自分の作りたいものより視聴者に受けるものを作るべきだ」とか「再生数が一定以下の作品を作った者は去れ」とか言いたいわけではないということが分かります。
また、「手記」の6:24のこの記述は「皮肉」を見た上で読むと、さらに際立った印象を受けます。
HDDの掃除をしていたら見覚えのあるtxtを見つける。
開いてみると昔連載しようとしていたノベマスのプロットが
連ねられている。
そこには。
直視する事さえ出来ないような。
輝く彼女たちの姿があった。
次に、7月27日に投稿された「皮肉」は、伊織のプロデュースがどうしても上手くいかないPが、有力な宣伝主に呼ばれ、流行のエロ路線へ転向するように言われる。そして、伊織から別のアイドルをプロデュースしなさいという内容の電話がかかってきて、その夜、伊織を取るか別のアイドルと組んで宣伝主の企画を受け入れるかの選択に迫られるという話です。
また、4:39で「視聴率は3桁から4桁前半ぐらい」とあるように、「視聴率(すうじ)」は再生数、「ファンレター」はコメント、「宣伝主」は、視聴者の総体、あるいはコメント以外で発信する人を示しています。「伊織」は自分の作りたい作品のことでしょう。比喩というほど隠されていないのは意図的なものと思います。
おそらくラストできっぱりと伊織を選んでいない所が、反感を招いたのではないでしょうか。動画説明文で「結末はあなたにお任せします。」と書かれていますが、実は手記Pはすでに選んでいるんです。
その答えは手記Pの連作1話、
ここにあります。「El Camino Real!」は複数プロデューサー制で、例えば真のプロデューサーのことが真Pと書かれる世界です。そして、1話の冒頭で登場し、彼の語りで物語が進む、その人物こそ伊織P(=手記P)なんです。上記の「伊織」は自分の作りたい作品であるという提示とも符合します。別のシリーズに答えを求めるのは卑怯と思われるでしょうが、私はこのように思います。もちろんこのような印象批評はよく外れますが。
「皮肉」のラストで伊織に電話している、つまり伊織を選んでいるとすれば、「手記」→「皮肉」が前編・後編というのも、もっと理解しやすくなります。前編「手記」では、主人公は自分の作りたいものを崩してしまったために、自分を見失い去っていきます。しかし、後編「皮肉」では、主人公は伊織と自分のやり方を守り、立ち向かって行く。「手記」がBAD ENDであれば、「皮肉」はひと時のGOOD ENDであるということです。これが手記Pがマイリストコメントに書かれた「良い案配」ということでしょう。
結論として、「手記」→「皮肉」に一貫するテーマは、「自分の好きな物を作ろう」ということです。ここまで書いてきて、少なくとも私は、これ以外の読み方はできません。